HTTP 認証

概要

HTTP プロトコルハンドラは、多くの認証スキームを実装しています。Sun による Java SE Version 6 の実装では、次がサポートされています。 これらの各スキームの詳細については次に説明しますが、通常はアプリケーションコードによってほぼ同じ手法で使用されます。java.net.Authenticator クラスにより、認証を有効にして、個々の認証スキームに使用するユーザー名とパスワードが保存されている場所にアクセスできるようになります。

一般に、認証スキームはすべてプロキシとサーバーの両方によって機能します。一部のもの (基本およびダイジェスト) は、プロキシとサーバーで同時に使用できます。プロキシとサーバーの認証を区別する方法については次を参照してください。

Authenticator クラスの使用方法

Authenticator とは、アプリケーションで拡張された abstract クラスを示しており、一度インストールされると、認証の相互作用に必要なユーザー名とパスワードを取得するために呼び出されます。

java.net.Authenticator の拡張

アプリケーションコードにより、getPasswordAuthentication() メソッドをオーバーライドする必要があります。なお、このメソッドは abstract ではなく、デフォルト実装は処理を行いません。次にもっとも単純な例を示します。
    class MyAuthenticator extends Authenticator {

        public PasswordAuthentication getPasswordAuthentication () {
            return new PasswordAuthentication ("user", "password".toCharArray());
        }
    }

この例では、各 HTTP 認証の相互作用に使用するユーザー名「user」とパスワードを返します。さらに実践的な例では、java.net.Authenticator の別のメソッドを使用して認証を必要とする HTTP 要求について詳細情報を取得します。資格の要求をそれぞれ処理する方法について決定するには、getPasswordAuthentication() を実装して、次のメソッドのいずれかを呼び出します。

認証の有効化

オーセンティケータの適切な実装クラスを定義し、次を呼び出すことにより認証を有効にします。
        Authenticator.setDefault (authinstance);

ここで authinstance は、すでに宣言済みの実装クラスのインスタンスです。これが呼び出されない場合、認証は無効になり、サーバー認証エラーが IOException オブジェクト経由でユーザーコードに返されます。HTTP 実装は、インストールされると、可能な場合に、キャッシュされた資格経由またはシステムから取得可能な資格経由で自動認証を試行します。正しい資格が使用できない場合は、ユーザーのオーセンティケータを呼び出して、この資格を取得できます。

使用される認証スキームの制御

サーバーがクライアントの認証を必要とする場合、そのサーバーは多くのスキームをクライアントに提案し (例: ダイジェストおよび NTLM)、クライアントはその中からスキームを選択できます。通常、アプリケーションでは、使用するスキームの種類は考慮されず、実装においてもっとも強力な (もっともセキュアな) プロトコルが透過的に自動選択されます。

特定のスキームを必ず使用する必要がある場合は、次のシステムプロパティーを設定してデフォルト時の動作を修正できます。

        -Dhttp.auth.preference="scheme"

コマンド行でこのプロパティーの設定を行う場合は、-D を指定します。「http.auth.preference」はプロパティー名であり、scheme は使用するスキーム名です。提案したスキームのリストにサーバーがこのスキームを含めない場合は、デフォルト設定が有効となります。

各認証スキームの詳細

HTTP 基本認証

基本認証は単純ですが、RFC 2317 で定義されているセキュアではない認証スキームです。ユーザー名とパスワードは Base 64 でエンコードされているため、パケットデータにアクセスするユーザーはこれらの情報を簡単に取得することができます。基本認証のセキュリティーは、HTTPS を採用し、要求と応答を暗号化することによって改善できます。

getRequestingPrompt() メソッドは、サーバーが提供するような基本認証レルムを返します。

HTTP ダイジェスト

ダイジェストは、MD5 ハッシュアルゴリズムを採用し、ユーザー名とパスワードの暗号化ハッシュに基づく比較的セキュアなスキームです。また、ダイジェストにより、サーバーは、共有の秘密 (パスワード) も認識することをクライアントに証明することができます。この機能は、すべてのサーバーでサポートされているわけではないので、通常は無効となっています。次のシステムプロパティーで切り替えが可能です。
        -Dhttp.auth.digest.validateServer="true"
        -Dhttp.auth.digest.validateProxy="true"

getRequestingPrompt() メソッドは、サーバーが提供するようなダイジェスト認証レルムを返します。

NTLM

NTLM は、Microsoft によって定義されているスキームです。このスキームは、基本認証に比べてセキュアですが、ダイジェスト認証ほどではありません。NTLM は、プロキシまたはサーバーで使用できますが、同時に使用することはできません。プロキシで使用されている場合、これはサーバー認証用に使用できません。これは、プロトコルが実際に個々の HTTP 相互作用ではなく TCP 接続の認証を行うからです。

Microsoft Windows プラットフォームでは、NTLM 認証により、ユーザーのオーセンティケータオブジェクトを要求せずにシステムからユーザー資格の取得を試みます。このような資格をサーバーが受け入れない場合は、ユーザーのオーセンティケータが呼び出されます。

NTLM をサポートする以前に Authenticator クラスが定義されているため、NTLM ドメインフィールドの API をさらにサポートすることはできません。ドメインを指定するには、次の 3 つのオプションがあります。

  1. ドメインを指定しない。環境によっては、ドメインを実際に必要とせず、アプリケーションで指定する必要がない。
  2. ユーザー名の前にドメイン名 + バックスラッシュ「\」を付けることで、ドメイン名をユーザー名内にエンコードする。この方法では、ユーザーがこの表記方法を使用しなければならないということを意識すれば、Authenticator クラスを使用する既存のアプリケーションを変更する必要がない。
  3. ドメイン名を方法 2) で指定せず、システムプロパティー「http.auth.ntlm.domain」が定義されている場合、このプロパティーの値がドメイン名として使用される。

HTTP ネゴシエーション (SPNEGO)

ネゴシエーションは、どのような GSS 認証メカニズムも HTTP 認証プロトコルとして使用できるスキームです。現在、このスキームでは Kerberos と NTLM だけがサポートされています。NTLM についてはすでに上で説明しているため、このセクションでは、HTTP 認証用 Kerberos のセットアップ方法についてのみ説明します。

Kerberos 5 の構成

SPNEGO メカニズムは JGSS を呼び出し、JGSS は実際の作業を行うために Kerberos V5 ログインモジュールを呼び出します。Kerberos 5 構成が要求されています。この構成には次のものが含まれます。
            java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \
                 -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \
                 ClassName
たとえば、次のようにファイル spnegoLogin.conf を指定できます。
          com.sun.security.jgss.krb5.initiate {
              com.sun.security.auth.module.Krb5LoginModule
                  required useTicketCache=true;
          };
次のように java を実行します。
            java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \
                 -Djava.security.auth.login.config=spnegoLogin.conf \
                 -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \
                 ClassName

ユーザー名およびパスワードの取得

ほかの HTTP 認証スキームと同じように、必要に応じて、クライアントはカスタマイズされた java.net.Authenticator を指定して HTTP SPNEGO モジュールにユーザー名とパスワードを指定できます (つまり、資格キャッシュは使用できません)。オーセンティケータでチェックする必要がある認証情報は、getRequestingScheme() を使用して取得可能なスキームのみです。値は「Negotiate」である必要があります。つまり、オーセンティケータ実装は次のようになります。
    class MyAuthenticator extends Authenticator {

        public PasswordAuthentication getPasswordAuthentication () {
            if (getRequestingScheme().equalsIgnoreCase("negotiate")) {
                String krb5user;
                char[] krb5pass;
                // get krb5user and krb5pass in your own way
                ....
                return (new PasswordAuthentication (krb5user,
                            krb5pass));
            } else {
                ....
            }
        }
    }
注意:java.net.Authenticator の仕様では、ユーザー名とパスワードを同時に取得するように設計されています。このため、JAAS 構成ファイルに principal=xxx を指定しないでください。

スキームの優先設定

クライアントは、システムプロパティー http.auth.preference を指定して、サーバーが特定のスキームを要求するかぎりそのスキームが常に使用されるように指定できます。このシステムプロパティーに対して「SPNEGO」または「Kerberos」を使用できます。「SPNEGO」は、GSS/SPNEGO メカニズムを使用してネゴシエーションスキームに応答します。「Kerberos」は、GSS/Kerberos メカニズムを使用してネゴシエーションスキームに応答します。通常、Microsoft 製品に対して認証を行う場合に「SPNEGO」を使用できます。値「Kerberos」も Microsoft サーバーに対して動作します。Kerberos は、ネゴシエーションは認識するが SPNEGO は認識しないサーバーに対してのみ使用する必要があります。http.auth.preference が設定されていない場合、選択される内部順序は次のようになります。 ネゴシエーションがサポートされる場合は常に GSS/SPNEGO が選択されるため、Kerberos はこのリストには示されていません。

フォールバック

最後のセクションに記載された処理の手順に応じて、サーバーで複数の認証スキーム (ネゴシエーションを含む) を提供している場合、Java では、ネゴシエーションスキームの検証を試みます。ただし、プロトコルを正常に確立できない場合 (kerberos の構成が正しくない、サーバーのホスト名が KDC 主体 DB に記録されていない、オーセンティケータから提供されるユーザー名とパスワードが間違っているなど)、2 番目に強力なスキームが自動的に使用されます。注意:http.auth.preference が SPNEGO または Kerberos に設定されている場合、失敗する場合でも単にネゴシエーションスキームを試行することが要求されていると想定されます。 ほかのどのようなスキームにもフォールバックせず、HTTP 応答から 401 または 407 のエラーを受け取ることを表す IOException がスローされます。

たとえば、Active Directory 内の Windows サーバーで稼動中の IIS サーバーがあるとします。このサーバー上の Web ページは、統合 Windows 認証によって保護されるように構成されています。つまり、サーバーはネゴシエーションと NTLM の両方の認証を要求します。

保護されているファイルを取得するには、次のファイルを準備する必要があります。

RunHttpSpnego.java のコードリスト


import java.io.BufferedReader;
import java.io.InputStream;
import java.io.InputStreamReader;
import java.net.Authenticator;
import java.net.PasswordAuthentication;
import java.net.URL;

public class RunHttpSpnego {

    static final String kuser = "username"; // your account name
    static final String kpass = password; // retrieve password for your account 

    static class MyAuthenticator extends Authenticator {
        public PasswordAuthentication getPasswordAuthentication() {
            // I haven't checked getRequestingScheme() here, since for NTLM
            // and Negotiate, the usrname and password are all the same.
            System.err.println("Feeding username and password for " + getRequestingScheme());
            return (new PasswordAuthentication(kuser, kpass.toCharArray()));
        }
    }

    public static void main(String[] args) throws Exception {
        Authenticator.setDefault(new MyAuthenticator());
        URL url = new URL(args[0]);
        InputStream ins = url.openConnection().getInputStream();
        BufferedReader reader = new BufferedReader(new InputStreamReader(ins));
        String str;
        while((str = reader.readLine()) != null)
            System.out.println(str);
    }
}

krb5.conf のコードリスト


[libdefaults]
    default_realm = AD.LOCAL
[realms]
    AD.LOCAL = {
        kdc = kdc.ad.local
    }
    

login.conf のコードリスト


com.sun.security.jgss.krb5.initiate {
  com.sun.security.auth.module.Krb5LoginModule required doNotPrompt=false useTicketCache=true;
};

次に、RunHttpSpnego.java をコンパイルして実行します。

java -Djava.security.krb5.conf=krb5.conf \
    -Djava.security.auth.login.config=login.conf \
    -Djavax.security.auth.useSubjectCredsOnly=false \
    RunHttpSpnego \
    http://www.ad.local/hello/hello.html

次のように表示されます。

Feeding username and password for Negotiate
<h1>Hello, You got me!</h1>

ドメインユーザーとして Windows マシン上で実行しているか、またはすでに kinit コマンドを発行して資格キャッシュを取得している Linux か Solaris マシン上で実行している場合は、次のようになります。クラス MyAuthenticator は完全に無視され、出力は次のようになります

<h1>Hello, You got me!</h1>
これは、ユーザー名とパスワードが参照されないことを示しています。これはシングルサインオンと呼ばれます。また、次のように実行して、
java RunHttpSpnego \
    http://www.ad.local/hello/hello.html
フォールバックがどのように実行されるかを確認できます。この場合は、次のように表示されます。
Feeding username and password for ntlm
<h1>Hello, You got me!</h1>

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